2018年4月28・29・30の3日間、underson野崎の編書「戀愛譚 東郷青児文筆選集」発売記念展として、東郷が手がけた装釘や包装紙、袋、マッチ箱などささやかな展示を大阪北浜アトリエ箱庭にて開催いたしました。東郷青児121回目の誕生日でもある初日から3日間ともおかげさまでたくさんの方に来ていただき本当にありがとうございました。
本町のシェ・ドゥーブル(chef-d’œuvre)さんに作っていただいたオリジナルお菓子。Seijiの“S”と星をかたどったメレンゲに、妖精の薄衣を彩る宝石のような銀色のアラザンがちりばめられた〈青児と星のメレンゲ〉。マカロンっぽい可愛い青ではなく、大人っぽいシックな青にして欲しいとリクエストしていたイメージぴったりの仕上がり。東郷の伝説の著書『カルバドスの唇』にちなんで、カルバドス(りんごの蒸留酒)をたっぷりと贅沢に染み込ませた〈カルバドスのミニパウンドケーキ〉『戀愛譚』にふさわしい大人っぽい味わいになりました。
ご来場いただいた方にお渡しするフリーペーパー《Pâtisserie Rêve bleu 青の夢 洋菓子店》も制作。昭和の頃、どこかの街にあったような架空のパティスリーに置いてある商品案内をイメージしデザイン。表紙は、2006年に惜しまれながら閉店しました〈渋谷フランセ〉の包装紙の絵なのですが、オーナーさんに使用許可のお願いをしたところ、快く許諾していただいただけでなく、お店で使っていたミニ紙袋の在庫をお譲りいただけるという奇跡が!数に限りがありましたので「戀愛譚」をお買い上げいただいた方にその紙袋に入れて差し上げました。本とお菓子を買っていただいた女性2人が、東郷の美人画があしらわれた〈渋谷フランセ〉の紙袋を手にし並んでいる光景は、なんだか東郷の絵が世の中に溢れていただろう昭和のあのころにタイムスリップしたかのような不思議な気分になりました。
お客さまのなかに、14年前にundersonで制作しましたフリーペーパー「gris-gris」東郷青児装釘本特集を持ってきていた方がいらっしゃいました。これがキッカケとなり、河出書房新社らんぷの本「東郷青児 蒼の詩 永遠の乙女たち」が出版され、生誕120年の展覧会にも微力ながらお手伝いすることになり、そして今回の文筆選集「戀愛譚」に繋がっていることを考えると感慨深いものがありました。ボロボロになってもまだ持っていてくださった「gris-gris」を眺めながら、東郷の作品のように長く愛されるモノをこれからも作っていきたいなと実感するエピソードでした。